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イタリアかけある記
ラブルも多く、入居者募集から家賃の徴収まで不動産会社に業務委託をしている
ケースが多い。また、土地を有する地主がアパート経営にあたり、資金調達、建築
設計施工、入居者の管理まで一切不動産会社に任せ、10年後に初めて自分の
持ち物になるというシステムもある。
 (そりゃあ不動産屋さんの言うとおりだ、不動産屋と入居者との契約には後から
発生した除雪費は入っていない、当然の話だ)
  早川は深谷班長が何を言いたいのか分からない、だんだんいらいらしてくる。
 「とにかく、今年は除雪費をもらわなければならないから、町内会の排雪費はも
らえないの・・・・・・」 と、深谷班長の本音が出る。
 「それはおかしいんじゃないの?アパートの除雪費と町内会の排雪費は別物で
すよ」
  早川は噛んで含めるように話す。
 「分かっていますけど、入居者は除雪費と排雪費の両方は払えないんです」
 「この分会にはアパートがいくつもあるけれども排雪費を払っていない人はいま
せん」
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 「それは大家さんが自分で除雪しているから・・・・・・」
 「こんな例はありませんよ、こうしたらどうですか?深谷さんの徴収する2,50
0円の除雪費の中から1,500円を町内会の排雪費に回したら?」
 との早川の提案に、
 「除雪費はそれだけかかるんですからそれは出来ません」
  深谷班長はそう繰り返す。そして埒が明かないと見たのか、
 「もう一度不動産屋に相談してみます」
  と言って帰って行った。
 (まったく自分本位だ、親が元の家に住んでいなくとも引き取った息子が排雪費
を届けてくれるケースもあるのに・・・・・・)
  と早川は思っていた。

  早川の分会で一戸建てに住んでいるお年寄りが、1人暮らしが出来なくなり息
子夫婦や娘夫婦と同居し、町内会から出て行くケースが増えている。また、老人
ホームに入る人も出てきた。
  近くの遠藤さんは30数年間この町内会に住んでいたが、2年前に夫に先立た
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れ、病気がちになり他の区に住んでいる息子の家に身を寄せた。しかし、家財や
思い出の品々があるのか、自宅は他人に貸したり売ったりせずにそのままにして
いる。
  息子さんは、時々庭の手入れに来たり、除雪に来ている。庭の木の枝払いや屋
根の雪下ろしには人材銀行に頼んでいる様子である。1人暮らしをしていた母親
の言いつけだろうか、ある時、息子さんが排雪費を持って当番の班長さん宅を訪
れている。 そういう奇特な人もいる。
  一軒家を黙って出て行って連絡が取れないケースも今後増えると予測される。
住んでいないからといって町内会として排雪しないわけにはいかず、頭の痛い問
題である。

  年末に深谷さんの一件があって早川の平成22(2010)年が終わった。そして
新しい年、平成23(2011)年がやって来た。
  深谷班長が早川の自宅へ来てから約1ヶ月が経ったが、深谷班長からはその後
一言の連絡もない。排雪費の納入期限が後10日あまりとなっていた。
  (困ったもんだ)
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  早川は気をもんでいた。

  1月19日、1月2回目の回覧用文書が早川の自宅に届けられる。
  今日の天気は晴れ、予想最高気温はプラスの1度でやや肌寒い。しかし、今回
は重い広報誌もない、回覧文書のみである。早川は軽自動車を使わず歩いて班
長宅に届ける事にした。
  表に出てみると、積雪は50cm前後だが、札幌市の除雪機が盛り上げた雪と
各家庭が出した雪で、歩道は通学路を除いてないに等しい。
  早川は班長宅をもれなくつぶすために慣れた道を一筆書きを書くように歩いて
行く。半分以上回り中小路に入ると、深谷班長宅の前に深谷班長がいて近所の人
と話しているのが見えた。
 「回覧板です」  近づいた早川が深谷班長に話しかける。
  気が付いた深谷班長は近所の人に断り話を打ち切る。相手が帰ったのを見て
早川が訊ねる。
  「排雪の件、どうなりました?」
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第9話 雪虫が飛んで  その5 ★★★★★






















           

         

































































































































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