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イタリアかけある記
  住宅ローンを組んで家を購入した若い人はまだ体力があるから自分で雪かき
をしているが、年を取るにしたがって苦痛になってくる。
  そうすると機械に頼るようになってくる。
  家庭用除雪機は軽油発動機で動かす物と電気で動かす物があるが、狭い敷
地では夏場の置き場所が問題となる。
  融雪機つき排雪溝ボイラーは雪が一晩でどっさり降ると重い蓋を持ち上げるの
が大変である。年とともに体力がなくなってくると投げ込むのもきつい仕事となる。
  いちばん楽なのがロードヒーテング。スイッチ一つで雪を融かしてくれる。灯油
ボイラーでインターブロックの下に熱い不凍液を循環させる方式と、電熱線をイン
ターブロックの下に敷いて電気の熱で融かす方式がある。しかし、どちらの方式も
設置コストとランニングコストが高い。ランニングコストは電気式の方が高く、最近
では灯油式の設置が多いようである。
 
  早川は、若い時に先輩の引越しの手伝いで腰を痛めて以来、疲れてくると坐
骨神経痛になりやすい。まして現役中二日酔いで朝に雪かきをするとてきめん
腰を痛める。その後1週間以上酒を控えたり膏薬を張りっぱなしで耐えなきゃな
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らない。
  年々雪かきが堪えるようになった定年少し前の事である。猫の額ほどの庭を
作り直す事になり、これを機会にインターブロックの下にロードヒーテング工事を
してもらった。これで雪かきは門の前の出入り口のみとなりそれ以来腰を痛める
事もなくなった。

 「やあ、今朝は大雪で雪かきが大変だった」
  と言いながら部下の川村課長が席に座る。
 「大雪だったね、あれ?君の家ロードヒーテングしてたんじゃなかった?」
  早川が確かめる。
 「そうなんですけど、神さんが『灯油が高い』と言ってスイッチを入れないんです
よ。朝起きてスイッチを入れたもんだから、上は真っ白、下はシャーベットで長靴
をはいて雪かきさ・・・・・・」
  と川村君が笑う。ロードヒーテングは雪が積もってからスイッチを入れても下の
雪だけが融けて空気のトンネルが出来て上の雪は融けない。
  雪かきはむきむきマンの川村君にとっては朝飯前の軽い仕事らしい。
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 (夫婦2人とも実家が農家で体力には自信があるのか、経済観念がしっかりし
ているのか?これは高い車を買ってガソリンが高いと乗らないようなもんだ)
  腰の弱い早川には到底出来ない相談である。
  これに似た話はざらにある。後輩と昼食を取っていた時である。
 「今朝は雪かきで疲れたよ」
  数年前に念願の一軒家を新築した三原君の目の下がくぼんでいる。
 「どうして?君んところ電気のロードヒーテングだったろう?」 早川が箸を止める。
 「神さんが電気代をケチって電気を入れてなかったのさ」
 「ふうん、奥さんしっかりしているねぇ?」
 「しっかりし過ぎですよ、俺だって先輩と同じように腰が弱いのに・・・・・・」
  学生時代空手をやっていた三原君はそのつけが来て、数年に一度は腰痛で
マッサージに通っていた。
 「奥さんにあんまり愛されていないな?」 と早川が冷やかすと、
 「愛されていますって」
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  三原君がむきになる。

  一方では、除雪や排雪をめぐってトラブルも起きている。
 「子供の教育費がかかり除雪機や排雪溝やロードヒーテングにお金は使えない、
かと言って雪かきがだんだん辛くなる。除雪費用が高くなければ何とか工面出来
るのだが・・・・・・」
 「年金生活になり、今更除雪機やロードヒーテングに投資できない、かといって
体力も落ちるばかりである。しかし、定期的に排雪してくれればまだ玄関前くらい
自力で除雪出来るんだが・・・・・・」
  こういった人達が除雪詐欺に遭ったのである。人の弱みに付け込み、前金で募
集しながら実際には除雪に来ない悪質な業者が札幌を中心として近郊のあちこ
ちに現れたのであった。
  その一つの象徴的な例が2005年3月6日の悪徳業者の起訴であった。札幌
市北区の民間排雪業者が契約回数の作業をせず連絡が取れなくなったのであ
る。被害者375人が集団で業者を詐欺の疑いで道警に告訴、被害額は600万
円以上にも上った。 排雪詐欺は他の豪雪地帯にも広がり、現在でも時々起きて
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第9話 雪虫が飛んで  その3 ★★★






















           

         

































































































































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