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  と会議は排雪費の話になっていた。
 「はい、札幌市とのパートナーシップ制度による排雪は過去の排雪費が少し溜
まりましたので昨年は値下げしましたが、今年はそれもなくなりました。今年は例
年通り戸建住宅は3,000円、共同住宅は1,500円といたします。
  分会長宛文書・班長宛文書・町内会員向け回覧板・賛助会員宛文書・排雪費
収納内訳表・領収書などの一連の書類を封筒に入れてありますので、分会長は
お帰りの際に忘れずにお持ちください。
  なお、金融機関への振込みは『排雪口』の口座ですのでくれぐれもお間違いの
ないようにお願いします」
  飲兵衛で赤ら顔の沢口経理部長は80歳になっているが、元銀行マンらしく話
にまったく無駄がない。

  雪国の雪対策は大変である。西日本は台風の被害が多く、その対策に多くの
費用と労力を使うが、東日本や北日本・北海道などの雪国は雪対策に莫大な費
用がかかっている。
  ちなみに、札幌市の平成22(2010)年の雪対策予算は147億円で、その内
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訳は道路除雪費が113億円、雪対策費が34億円となっている。道路除雪費は
市道だけだから道道や国道の分を加算すると莫大な予算となろう。
  札幌市の同年の世帯数は88万5,848世帯、人口は191万3,505人だ
から、これで雪対策予算の147億円を割ってみると、1世帯あたり1万6,600
円、1人当たり7,680円かかっている計算になる。
  札幌市内の道路は年々新たに敷設されたり、拡幅工事をしているから、除雪
費用は年々増加する傾向にある。 これだけ雪対策に税金を使っていて、なおか
つ町内会会員がさらに費用を負担するには理由がある。
  道路幅10m以上の市道は一定の基準があり、降雪量に応じて除雪車が出動
する。しかし、これはあくまで除雪であって排雪ではない。通学路以外は除雪の
雪が歩道に溜まり、かつ敷地内の雪を出す家も多く、歩道がふさがるのが普通
である。この雪をことごとく排雪するとなると雪対策費は膨大なものになり、税金
も上げざるを得なくなってくる。
  このままでは、通勤や買い物、病院通いなど生活に支障を来たすとして、札
幌市は平成4年から実験を繰り返し、道路幅10m未満の道路について助成金
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を出すと同時に町内会の受益者負担を組み込んだ「除雪パートナーシップ制度」
始めた。現在この制度がかなりの町内会に普及している。なお、この際同時に
おこなう道路幅10m以上の道路の排雪は札幌市の費用負担となっている。
  ちなみに札幌市のパートナーシップ制度の費用は13億4,200万円で、道路
除雪費113億円の中に含まれている。       (札幌市役所ホームページ)

  東山町内会は加入世帯が3,700で、大きさでは札幌市で1、2を争う大町内
会である。その1年間の排雪費は約740万円である。排雪は翌年の2月中旬だ
から、年内の12月に回覧板を回し、翌年の1月末日までに班長さんが各世帯を
回り、排雪費を徴する事になる。
  理事会が終わり、2人は家路に着く。途中の信号まではいっしょである。
 「ところで早川さんとこは排雪費が100%集まるかい?」 
  と高木が訊ねる。どうやら高木の分会はアパートが多く集めにくいようである。
 「ほぼ100%だね」  早川が答える。
 「そりゃすごい」
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  高木が驚く。
 「町内会加入の方はうまくいかないよ。アパートに住んでいる人の中には母子家
庭だ
ったり夫が失業中だったりして加入する余裕のない人がいるからこれは無理
を言えない。しかし、排雪費については『みんなが通る生活道路を確保するため
に必要です』と全世帯からもらうよう班長さん言っているのさ」
 との早川の答えに、
 「なるほど、そういう言い方もあるのか?今度そう言ってみるか?」
  高木がうなづく。
 「ご健闘を祈っています」
  早川ははそう言って高木と別れたものの、その後排雪費の徴収で難題に出会う
とはつゆほども思っていなかった。

  一戸建てに住む一般の家庭では除雪が大問題である。
  自家用車で出勤する人は朝早起きて駐車場の雪かきをしなければならない。
共稼ぎが増えると車は2台となり、共稼ぎでなくとも夫婦で1台ずつという家庭が
増えている。この雪かきが大変なのである。
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第9話 雪虫が飛んで  その2 ★★






















           

         

































































































































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