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福祉部が社会福祉協議会に申し出たのか?児童民生委員が不足して福祉活動
が停滞していると言ってもそれは行政が解決すべき問題ではないのか?もしもわ
が町内会が申し出たとしたら、それは町内会の状況をよく認識した上での事なの
か?わが町内会の役員は一昨年の理事の大量脱退で人数が足りなく、日ごろの
町内会活動にも支障を来たしている状況である。理事の候補者を真剣に探すとか
もっと先にする事があるような気がします。原案作成が福祉部であってもそれこそ
重要な仕事ですから関係する理事達の意見を聞いてから具体策を練ってもらい
たい。以上」
  坂本総務部長は、一瞬、 (これは助かった) という顔で、
 「そういう事ですので、福祉部は次回に提案する時には良く検討してください、い
いですね?」  と さっさと議題を打ち切る。
 (この仕切りは何か変だぞ?)
  すると、早川は1年前酒の席で坂本総務部長が漏らした一言を思い出した。
 「私はね、『嫌だ、嫌だ』と言ったのに大林会長が『総務部長は他になり手がいな
いから頼む』って頭を下げるから仕方なくてなったのさ・・・・・・」
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  この時、これまての不自然な理事会運営がようやく理解できた。
 (そういう事だったのか?大林会長と坂本総務部長とは仲間だ。大林会長は来
年の改選を控えており何か実績を立てなければ継投できない、そこで玉置副会
長がやっていた福祉の仕事を取り上げ、新しい滝川福祉部長に高齢者見回り活
動を実現させて、自分の実績にしようとしたのだ。それに協力しているのが坂本
総務部長なんだ)
  早川は唖然としていた。

  敬老会の前にこんな事もあった。さて話は敬老会に戻る。
  開会15分前にはほとんどの対象者が来場し、玄関口も受け付けも席への案内
も騒然となっていた。
  男は替え上着かカーディガン姿、女は派手な色のワンピースかツーピース姿で
百花繚乱である。
 「本日はようこそお越しくださいました・・・・・・」
  理事会では恐い顔をしている滝川福祉部長が細い目をもっと細めて満面の笑
みを浮かべ司会をし始める。
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  誰かがカメラを持ってスナップ写真を取っている。
 「早川さん、あんた滝川部長に写真撮影を頼まれたんじゃなかった?」
  玄関ロビーから大会議室を見ていた高木が尋ねる。
 「いや、断ったよ」
 「福祉部に対する嫌味かい?」
 「そうじゃないよ、現役の時、役員のスナップ写真を取ったら、『お前は腕が悪い』
と文句を言うのさ、自分の顔の不細工を棚に上げて・・・・・・偉い人は自分の顔に
責任を持たなくっちゃ、顔は内面の鏡だからね、それ以来俺は人間を撮らないこと
にしてるのさ」
 「顔は心の鏡か?なるほどねぇ」  高木は納得した。
 「話は変わるが、敬老会の対象者の年齢を毎年一歳ずつ上げるって事は、死ん
だり出て来れない人を除いて毎年同じ人が出席しているって事でしょ?どこかおか
しいと思わないかい?」
 「そう言われればそうだね?」
 「他の町内会でも敬老会は町内会の財政難を理由に廃止しているところもある
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ううだし、わが町内会も収入が減って支出が増えてきているから、急に廃止できな
いとしたら制度を改めて、その年に還暦・古希・喜寿・米寿・白寿を迎えた年寄りを
祝う事にすれば経費も少なくて済むし、よほど値があるんじゃないかい?」
 「なるほどねぇ、今度理事会で言ってみたら?」
  高木が早川をけしかける。
 「発言しても変わらないと思うからさ・・・・・・」
  早川が答える。
 「どうしてさ?」
 「今の執行部の顔ぶれを見てご覧、お祭りマンボばっかりさ、財政難もどこ吹く風
で、何とかしてお金を使おうとしている」
 「そう言われてみれば、今の執行部は人相学的にそういう顔をしているよ」
  と高木が楽しそうに笑う。
  2人とも我に返り、大会議室を見やると、敬老会は東町町内会連合会会長・道議
会議員・市会議員などの来賓の祝辞も終わり祝宴に入ろうとしていた。何の用事も
なくて居場所のない2人は腰が痛くなって階段に腰掛ける。すると、
 「どいて、どいて」
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第8話 恍惚のブルース  その5 ★★★★★






















           

         
































































































































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