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 「みなさん、ご存知のように日本は老齢化が進行しています。孤独死も増えてお
りこのままで放って置けない深刻な社会問題となっております。高齢者の見回り
活動は他の町内会ではすでに取り組んでいるところもあります。わが東町町内会
事業方針にも福祉活動が重点施策として掲げておりますので、今年は高齢者見
回り活動に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います」
  「そういうことです、みなさんいいですね?」
  坂本総務部長がみんなの顔を見る。
 「はい、質問」
  黒田分会長が手を上げる。総務部の女性があわててマイクを持って黒田のと
ころに駆けつける。
 「今の説明では、何をどうするか、さっぱり分かりません。それでわが町内会には
何歳以上の高齢者が何人いるのですか?」
 「今、調べているところです」と滝川部長が答える。
 「それじゃあ、見回り活動は誰がするんですか?」
 「今のところ児童民生委員と分会長が2人1組で回ってもらおうと考えています」
 「おれおれ詐欺などがあり、今の年寄りはなかなかドアも開けてくれませんよ」
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  黒田が反論する。
 「児童民生委員が行っても開けてくれない老齢者がいるそうですから、分会長と
児童民生委員と2人で回るんです」
 「1年間に何回回るんですか?」
 「何歳以上を対象にするかによって変わってきます」
  2人の問答を聞いているうちにだんだんいらいらしてきた早川は手を上げる。
 「滝川部長に要望です。これでは賛成にしても反対にしても議論のしようがありま
せん。企画を出すのなら対象者が年齢別に何名いるのか一覧表にして、誰が何を
どのようにするか具体的に紙に書いてください。これでは今後聞いた聞かないで問
題になりますし、時間の無駄ともなります」
  早川の意見に、
 「そうだ」  他の理事からも声が上がる。
  「滝川部長、答弁してください」
  坂本総務部長が答弁を促す。
 「対象者の数は個人情報でして児童民生委員しか分かりません。児童民生委員
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と相談して出来るものについては明らかにしてまいりたい・・・・・・」
  滝川部長はそう答え、この場はいったん収まった。
 「具体的に何をするって言うのさ?さっぱり分からない。分会長と児童民生委員が
回るだって?『町内会挙げて』と言いながら福祉部長は回らないのか?われわれ
分会長は福祉部長の部下ではないぞ?」
  早川の右隣に座っている高木分会長がつぷやく。
 「ほんと」  早川が同意する。

  こんな一幕があっても、滝川部長は自分の説明の仕方が悪いとは思わず、出席
の役員達がこの重要な社会問題を認識していないと判断したようである。早速次
の手を打ってきた。
 滝川部長は8月と9月の理事会当日、理事会の開催前に社会福祉についての
勉強会を設定したのである。
  8月の理事会での勉強会は「福祉の町づくり」というテーマで、講師は東区社会
福祉協議会事務局であった。、
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  勉強会の要旨は、
 「東山町内会の総人口は10,529名で65歳以上の高齢者が2,548名おり、
高齢化率は24.2%で、札幌市の19.8%や東区の20.6%より高い数字とな
っている(平成21年10月1日現在)。高齢者を取り巻く状況として、孤独死の増
加、自殺者の増加、悪質商法・架空請求・振り込め詐欺の増加などがあり、これ
らを予防するには地域ぐるみの見回り活動が大切である。だから社会福祉協議
会と児童民生委員と町内会が協力してやっていきたい」
  と言うものであった。
  聞き終わった早川は、
 (社会福祉協議会の講師が言っている事はもっともだが、自分を含めて65歳以
上の高齢者が町内会に2,548名もいるとしたら、50人そこそこの役員で全員見
回りするなんてとても出来ない話だ。役員の中には見回り活動を出来る元気な人
もいるが、中には見回れても当然という人もいる)
  と思っていた。

  9月の理事会での勉強会は「東山町内会 福祉の町づくり−具体的な取り組
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第8話 恍惚のブルース  その3 ★★★






















           

         

































































































































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