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 「おっ、今の派手派手しい婆さん達は何者だ?」
  早川の目の前を赤や黄色のけばけばしい格好をした婆さんご一行が通り過ぎ
る。彼女達は大きな荷物を抱え、どすんどすんと音を立てて2階へ上って行く。
  ここは東山町内会館の玄関フロアーで、1時間後には町内会の敬老会が始ま
ろうとしていた。
 「あれはハワイアンダンス愛好会の面々さ、今日の敬老会で踊るのさ」
  早川と同じように所在投げに立っている高木が答える。
 「ハワイアンダンサー?まるでビヤ樽ポルカだ。福島県いわき市のフラガールのよ
うに若くてきれいだったら目の保養になるのにね?」
  早川が今しがた通り過ぎた彼女達の体型を思い出す。
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 「それを言っちゃあおしまいさ、ハワイアンダンス愛好会は健康と美容のため、こ
の会館で日々練習を積み重ねているのさ」
  高木が解説する。
 「その割には痩せていないな」
 「ハワイダンスを踊って汗をかいてますますご飯が進むのさ、毎年夏祭りでも踊り
を披露していたでしょう?」
 「そうだったっけ?」  夏祭りではとうきびの皮むきに専念していた早川は彼女達
の舞台に気が付かなかった。

  東山町内会の敬老会は平成22年(2010)年9月12日日曜日、午前11時に
開催される予定である。早川達役員はその1時間前からお手伝いに借り出されて
いた。
  早いもので早川が東山町内会の理事になって1年と4ヶ月経っていた。 町内会
の敬老会は昨年も実施していたが、白内障の手術を受けた早川はお手伝いに参
加していなかった。
  早川にとって初めての経験だけに興味津々であった。
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 「何ぼ敬老会の出席者が年寄りだからって、役員の集合時間が開会の1時間前
というのは早過ぎじゃないかい?それにしてもお手伝いがこんなに大勢必要なの
かい?」
  早川が疑問を口にする。
 「本当さ、敬老会の出席者が137人に対してお手伝いの町内会役員が50名以
上だよ、多過ぎるよね?われわれ分会長が1時間前に来たってこのとおり会場は
出来上がっているし、何もすることがない・・・・・・」
  高木も頭をかしげている。
 「われわれ分会長は受付をするんじゃないの?」
  早川が口を出す。町内会では分会ごとに出席者を取りまとめていた。
 「だって分会の出席者の顔なんか覚えていないもん。それにこんな狭い廊下に
10何人もの分会長が座れないよ?」
  高木が口を尖らす。確かに玄関から大会議室に向かう廊下には受付の机が3
本並んでおり、その前は人がやっと通れるほどの余裕しかない。そこを今日の余
興に出演する日本舞踊の人達が通り抜けて舞台の左手の音響室へ入って行く。
 「あれ?控え室は2階ではないのか?」
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  早川が言うと、
 「歌謡ショーもあるから控え室が足りないのかも知れないな?」
  と高木が推測する。
 「あらあら30分前だってのにもう来た人がいるよ?」
  早川が玄関口を見る。独りの爺さんがぎこちなく靴を脱いでいる。研修部長の北
村女史が駆け寄り、ふらふらしている年寄りの身体を支え、脱いだ靴をビニール袋
に入れて持たせる。
 「本当に早い人がいる」
  高木も気付く。
 「まずは受付を済ませてください」
  北村女史が老人の手を取り目の前の受付に案内する。
 「やっぱり早く来る人がいるんだ」
  早川は呆然としていた。
 「今日の敬老会が楽しみで早く目が覚めたんだろうか?」  高木も呟く。

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第8話 恍惚のブルース  その1 ★






















           

         
























































































































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