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  5月の理事会で「総会に寄せられた質問・要望についての回答案」が俎上に上
った。項目は夏祭からゴミステーションまで数多くあった。理事達からそれぞれの
回答の表現について細かい指摘がある。
  中でも4月の定期総会で回答を保留した「東山神社の寄付金集め」についてみ
んなの注目が集まる。
  黒田分会長が早速噛み付く。
 「ここに書いてあるように、『町内会の組織を使っての寄付金集めは違法である』
という意見に対して『町内会は寄付集めはしていません』という回答は苦肉の策だ
とは思いますが、その次の『会員が個人の立場で協力している方はおります』とい
う回答はおかしくないですか?」
 「そうですか?」
  揚げ足を取られないよう周到に文章を推敲したつもりの坂本総務部長が不満気
に黒田分会長の顔を見る。
 「言い訳に言い訳を重ねているようでさ・・・・・・」
  黒田分会長が眉をひそめる。
  これに対して坂本総務部長はとっさに代案が浮かばない。しばらく困った顔をし
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ていたが、
 「他の項目の修正がありますので、申し訳ありませんがそれらを含めて6月の理
事会に再度おはかりいたします」
  と坂本総務部長は次の6月の理事会まで時間稼ぎをする。出席していた理事達
はみんな「やれやれ、またか?」という顔をする。

  5月の理事会ではこのようなやり取りがあって、6月の理事会では黒田分会長が
指摘した「会員が個人の立場で協力している方はおります」という一項は削除され
た。
 (しかし、『町内会としては行ってはいません』という表現は実態と違っている。そ
んな事はみんな知っているのに・・・・・・)
  早川は執行部のやり方にあきれていた。
 (それでも神社の寄付集めが町内会の仕事でなくなったのは一つの前進か?今
年から神社の寄付金集めはしなくとも良いな・・・・・・よかった、よかった)
  早川は胸をなでおろす。
  しかし、そうは問屋が卸さなかった。
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 「早川さん、東山神社の協力員になってくれません?」
  2010年の7月、東山町内会の理事会終了後に、同じ東4A分会に所属する研
修部長の北村女史が早川の帰りを引き止める。早川が白内障の手術をしてから
すでに10ヶ月経っていた。
 「協力員?6月の理事会で、町内会は東山神社のお祭りの寄付金集めをしない
事になったんじゃないですか?」
 早川は問い返す。
 「建前はそうなんですが、町内会は地元の東山神社をずうーっと後押しして来た
から・・・・・・東山神社も町内会の協力なしでは成り立たなくて・・・・・・それでね、町
内会とは別に東山神社協力会を作る事になったのよ。それで経験のある分会長さ
ん達に率先してやって欲しいのよ」
  長い間、地主の妻として、町内会の役員として東山神社を支えてきた北村女史
が早川を何とか仲間に入れようと説得にかかる。
  早川が返事を保留していると、
 「実は決定ではないけれども、こんな風に考えているの・・・・・・」
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  と北村女史が一枚の紙を取り出して見せる。
  それを見ると、東山神社協力会の組織図があり、会長が大林町内会長、以下各
役職に執行部、部長、分会長の名前が連なっていた。
 (そういう事だったのか・・・・・・『町内会は神社の寄付集めをしとてません』と会員
に回覧文書で回答しておきながら、別組織を立ち上げたのか?これは看板の書き
換えではないのか?こんな組織に入ったら町内会役員を辞めても死ぬまで続けな
けりゃならない、そんなのご免だ。やりたい人がやればいいさ・・・・・・)
  早川はそう思いながら、
 「勘弁してください。私は旅行をしてスケッチしたり、ホームページを作ったりする
など、町内会の他にやることがたくさんありますので、これ以上仕事を増やしたくな
いのです・・・・・・」  と協力員をやれない理由を述べる。
 「どうしても駄目?神社のお祭りの寄付金集めはたいへんだから事務整理がきち
んと出来る人にやって欲しいのよ」
  北村女史はなおも執拗に食い下がる。
 「誠に申し訳ありませんが・・・・・・」
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第7話 知ってか知らずか  その5 ★★★★★






















           

         
































































































































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