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  町内会による寄付金集めについて、町内会員はもとより役員の中にも批判的
な意見があった。
  執行部がそんな雰囲気を感じてか、7月29日、分会長会議を召集した。議題
は寄付金についてであった。
  当日の午前中、赤い羽根募金を日本赤十字社東町事務局に納入してきたば
かりの早川は、
 「今日の会議は寄付金についてだって?」  と右隣の高木分会長に聞く。
 「何だろうね?すでに赤い羽根募金は終わったというのに・・・・・・執行部は何を
考えてんのかね?」
  高木分会長はいつものとおり無愛想に答える。
  左隣のアンパンマンこと山田分会長は早川の問いに反応しない。山田分会長
をはじめとする古参理事はどちらかと言えばいつも執行部よりの姿勢である。
  最初に坂本総務部長が春の日赤募金と秋の共同募金について分会長の意見
を求める。
 「これは言わば全国的な運動だから仕方がないのではありませんか?それにこ
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の地区で集まった募金はこの地区の福祉事業に使われるのだから・・・・・・」
  と黒田分会長が発言する。
  日赤募金と共同募金は民間の市民運動とうたいいながら、各地区の社会福祉
協議会がそれぞれの地区に募金協賛委員会を設置し、町内会組織を組み込ん
で募金運動を展開している。
 (何かおかしい)
  早川はそう思いながらも、この時はまだ反論できるような知識がなかった。
  この他、やり方について一部の分会長から批判も出たが、町内会としては今後
も協力せざるを得ないという結論になった。
  日本人は昔からお上のいう事には逆らわない傾向がある。お役所に嫌われたく
ない、気に入られたい、という意識は年寄りに多い。

  次のテーマは東山神社の寄付金集めであった。
 「最初に東山神社の山城総代からご挨拶がございます」
  坂本総務部長が左に座っている山城総代を紹介する。
 「例年、町内会の分会長さんのご協力により寄付金を集めていただいています。
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今年もこれからご説明するような日程で秋の例大祭を実施いたしますので、寄付
金集めを初めとして様々なご協力をお願いしたい」
  と、ぎこちない、通り一遍の挨拶をする。
 (あまり感謝しているようには見えないな?)
  早川は山城総代の挨拶を聞いてそう思った。
  続いて随行してきた神社の社務局が、すでに配布されている冊子に基づいて、
昨年の寄付金収支報告、今年の秋の例大祭の実行計画、収支計画、各町内会
別寄付金計画をるる説明する。
 「以上、東山神社さんからお願いと説明がありましたが、みなさん、何か質問は
ありませんか?」  坂本総務部長が分会長達の顔を見回す。
  常々東山神社の寄付金集めとやり方に疑問を抱いている分会長達が次から次
へと手を上げる。
 「これまで例大祭の実施計画や寄付金の収支計画、寄付金の実績報告につい
て事前の説明も一切なく、ただ寄付金集めを町内会幹部を通じて依頼してくるだ
けである。神社は実際に寄付金集めで苦労しているわれわれをどう思っているの
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か?神社の姿勢がまったく理解できない」
 「お祭りの寄付金収支報告と計画を初めてみたが、700万円の寄付金の半分
以上が神社の年間維持費に回されている。これはお祭りの寄付金集めの主旨に
反しているのではないだろうか?これだけの寄付金が集まるのなら、山車に乗る
子供達の衣装代を親に請求しなくとも良いのではないか?」
 「分会長や班長の仕事には、町内会費や排雪費の徴収もままならないのに、こ
の外に春の日赤募金、夏の神社の寄付金集め、秋の共同募金がある。その苦労
を考えているのか?三つの組織の募金集め下請けを指示している町内会の執行
部もおかしいですよ」
 「神社信仰は宗教じゃないという人もいますが、町内会の住民には実際には様
々な宗派の仏教徒、各種のキリスト教信者がおり、寄付金を集めに訪問すると、
『何で町内会が東山神社の寄付金集めをするんだ』と言われるんですよ、やって
いるわれわれはどう答えれば良いのですか?」
 「年末に町内会が取りまとめている神社のお札だって、われわれ分会長が申し
込んでも人手が足りないとか何とか言ってなかなか持ってこない。仕方なくこちら
から取りに行く事がままある。」
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第7話 知ってか知らずか  その2 ★★






















           

         

































































































































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