きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴 

おじさんの料理日記 

小説「猫踏んじゃった」



喜劇「猫じゃら行進曲」

小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記
若い人の倍以上かかる。
  しかし、看護士や事務員は病院の経営者から老人対策を徹底的に叩き込まれ
ているのか、辛抱強く対処している。昔の看護婦のように患者を叱ったりは決して
しない。ストレスの溜まる仕事である。

  さて手術前後の注意事項だが、
  前日は、手術前の目薬を2種類点眼する。入浴、洗髪をする。
  当日は、午前9時から手術する方の眼に4種類の目薬を30分おきに点眼する。
午前11時15分までに来院する。手術後は眼帯を着用する。当日は安静にする。
手術後2週間は力仕事や重たい荷物を持ったりしない事、また、スポーツやリハビ
リ運動はしない事。
  手術後1日目は、診察の後治療用眼鏡をかける。手術した眼に3ヶ月間点眼を
続ける。顔は拭く程度にして、顔から下のシャワー浴が可能。
  手術後2日目、診察がある。眼を圧迫しないようにして洗顔が出来る。
  手術後3日目は、入浴、洗髪が出来る。
  となっているが、面倒なのは手術当日の4種類の目薬の点眼である。黄色、赤
125

色、紺色、水色の目薬を9時から来院まで30分間隔で全部点眼しなければなら
ない。場合によっては病院への車の中でも注さなきゃならない事にもなる。入院し
た方が看護士にその都度指示されるから楽なのかもしれない。

  早川は白内障の手術のため、町内会の公園の草刈りや東野神社の寄付金集
めが出来ないので、早めに関係者にその旨を伝える。
 「そうかい、分かりました」
 「俺も片方見えにくくなってきているんだ」
 「お金もかかるし大変だね」
  と周りの理事達の反応はそれぞれである。
  早川はそのたびに、
 「手術は日帰りで片方ずつ1週間空けて手術します。所要時間は20分間くらいで
かんたんなようですよ」
  と答えたが、神経質な早川の内心は不安でいっぱいである。今まで一度も身体
にメスを入れた事はないのである。
 (目の玉を削るのだから痛いのではないか?何と言っても眼だから間違うと失明
126

するのではないか?) と余計な心配ばかりしていた。

  9月2日、手術日の当日、早川がひげをそり朝食を食べ終えると9時近くになっ
ていた。早川は4種類の目薬をテーブルの上に並べ、一つずつ注していく。
 「あんた、留萌の姉さんも札幌の姉さんも白内障の手術をしたって言うから何で
もないわよ」  早川の緊張を察した妻の景子が声をかける。
  早川は何年も前に姉達の白内障手術を聞いていたが、早川はその時はまだ若
く自分には関係ないと、上の空で聞いていた。今、その記憶がよみがえる。
 (早川家には白内障になりやすい遺伝子が入っているのかもしれない)
  そんな事を考えていると、目薬をどこまで注したか分からなくなってきた。
 「余計な事を言うなよ、分かんくなっちまった」
  早川は妻に八つ当たりをする。
 (間違ったって一滴の話か、大勢に影響ないか?)
  と自分に言い聞かせる。30分間隔での点眼は忙しい。持参する診察券、携帯電
話、ハンカチ、テッシュ、そして今点眼している4種類の目薬を用意しているうちに
127

出発する時間になっていた。
 「忘れ物はないわね?」
  八木眼科まで運転する妻の景子が念を押す。病院から手術後は歩いて帰らない
ようきつく言われている。妻には帰りにも迎えに来てもらわなきゃならない。

  早川が受付を済ませると、中の待合室で待機させられ、呼ばれるまで30分おき
に点眼を続けるよう言われる。周りを見回すと今日手術する患者が何人か座って
いる。見当たらない人はすでに手術室へ向かったのかもしれない。
  しばらく 落ち着かない気持ちで座っていると、
 「早川さん、こちらへ」  と看護士さんに呼ばれ、後をついて狭い階段を上っていく。
 (手術室は2階だ)
  今まで通った事のない階段を上るとベットが2つ置いてある小部屋に案内される。
すでに先に呼び込まれた患者がアイマスクをして横になっていた。
  早川は手術着に着替えさせられ、血圧を測られ、点眼される。
 「呼ばれるまでアイマスクをして横になってしばらくお待ちください」
128 
タイトルイメージ   タイトルイメージ 本文へジャンプ



第6話 リカバリディスク  その2 ★★






















           

         

































































































































前のページへ 次のページへ


トップページへ戻る