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イタリアかけある記
  とたんに会場のざわめきが消え、
  「はぁーっ」
  とため息がもれる。花火は10発続いた。
 「身近で見る花火も迫力があるね」
  早川ら会場清掃係は盆踊りが終わった事に気付く。やぐらの下では理事達が参
加者にお土産を配っていた。
  子供達は盆踊りの太鼓と花火による興奮が冷めないのか、お土産を配り終わっ
てもなかなか帰ろうとしない。夏休み中で明日は学校もない、昼間の高温が夜に
なっても下がらず、アドレナリンが出ているのかもしれない。
  理事達は会場の後片付けをして、紅白の幕やアンプや太鼓を火災や盗難に会
わないように町内会館へ運ぶ。そして縁日のテントをたたむ。それから火の気が
ないか公園内を一回りして見回る。やぐらと提灯の電気を切るといつものうす暗い
夜の公園になる。ようやく長い初日が終わった。
  「ご苦労さんでした、明日は男性理事は午前8時に公園に集合して縁日のテント
を撤収します。全理事は午後5時に集合して盆踊りの準備をいたします。いいです
ね?それでは解散いたします。ただし、会場清掃係は残ってください」
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  名前とは裏腹に小柄な大林会長が挨拶する。
 「ご苦労さん」、「お疲れさん」
  会場清掃係以外の人達は疲れた身体をお互いにいたわりあって家路に着く。

 「会場清掃係は残れと?何だ?何だ?」
  立川他会場清掃係が集まって先田の顔を見る。先田は会長の用件を知ってか
知らずか、むすっとしたままである。
  大林会長は他の理事が帰ったのを見届け寄って来る。
 「君達は商店街のゴミを受け取らなかったんだって?」
  大林会長が誰の顔を見るともなく詰問する。みんなの顔が強張る。
 「そりゃあ、しょうがないですよ。われわれがゴミを片づけた後に、商店街が持っ
て来たんだから・・・・・・」
  会議で何かと執行部に食いつく古谷が答える。みんながうなづく。
 「誰の許可を得てそんな事したんだ?」
 「だって、盆踊りが始まってもビールや焼き鳥を売っていたんだから、自分達が出
したゴミは自分達で処理するべきではないですか?」
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  古谷はなおも食い下がる。
 「だから誰の許可を得たんだ?と聞いてるんだ」
 「聞くも何も、いざ聞こうとしてもお偉いさん達はどこにいるのか、用事がある時に
は姿が見えないんだもの、決まった所にじっと座っててくれないと・・・・・・」
  他の理事達もうなづく。痛いところを突かれた会長は、
 「幹部は忙しいんだ・・・・・・こんな事で商店街との関係が悪化しないよう今後気を
つけて行動するように、解散」  と言って帰って行った。
  残ったみんなは興奮して帰らない。会長の姿が遠ざかってから、古谷がふたたび
口を切る。
 「商店街の縁日は盆踊りが始まる前にやめてもらわなきゃ、盆踊りの邪魔になる
し、ゴミも片付かないんだ。われわれはみんな困っているんだ。だから商店街との
交渉の際申し入れるよう、毎年お偉いさんに言っているんだが、商店街にいい格好
がしたくて誰も言わないんだ」
  古谷に続いて他の理事も話し出す。
 「テントも机も椅子も町内会がただで設置してあげてるんだから、自分達が儲けて
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出たゴミぐらい自分達で始末すべきですよ」
 「そうですよ」
  初めて経験した早川も相槌を打つ。
  この間、みんなの話を聞いていた先田がぼそっと口を開く。
 「明日も仕事がありますから、そろそろ帰りますか?」
  みんながうなづく。
 「ああ、やってられないや」
  古谷が大きな捨て台詞を放ち帰って行く。

  帰宅した早川はシャワーを浴びてビールを飲む。軽く食事をしてからベットに横
になるが、日焼けで額や首が痛く、身体もほてって寝付かれない。
 (みんな一生懸命頑張っているのに、会長のあんな言い方はないぞな?明日も
明後日も作業は続くのか?)
  早川はだんだんやる気が失せていくのを感じていた。


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第5話 祭りだ、祭りだ  その6 ★★★★★★






















           

         
































































































































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