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おじさんの料理日記 

小説「猫踏んじゃった」



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小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記
 それらをトラックから下ろしていると、町内会館に残って積み込みをしていた高木
分会長達がやってくる。  続いて女性理事達もやって来た。彼女達は会場にいた男
性理事達に「おはようございます」、「ごくろうさま」と声をかける。
  玉置副会長、北村研修部長、ライザ・ミネリ事加藤理事などおなじみの女性理事
達である。女性理事達は午前7時半から町内会館で焼きそばやおでんの下ごしら
えをしていたようである。
  みんなおそろいの深紅のエプロンを着ている。中でも顔も派手でグラマーな加藤
理事は深紅のエプロンから身体がはちきれそうで、ひときわ人目を引く。
 「加藤さん、迫力あるねぇ、あんたその格好でスナックを開いたら、爺さん達がたく
さんやってくると思うよ」
  ゲゲゲの鬼太郎のねずみ男に似ている黒田分会長が冷やかす。
 「あら、客ならもう少し若い男性じゃなくっちゃ」
  加藤理事は大きな目をぱちくりさせてにんまりと笑う。
 「この勝負、加藤理事の勝ち!」
  との玉置副会長の一言で一同どっと笑い転げる。女性理事達は今日は一年に一
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度の腕の見せ所で、みんな元気はつらつ、やる気満々である。
  町内会の縁日のテントは一つで、向かって左から焼きそば係、おでん係、ゆでと
うきび係と場所が決まっている。テント張りを終えた男性理事も前掛けをしてそれぞ
れの持ち場に着く。テントの中は戦場と化す。
  そのうち先田理事ら会場清掃係が古谷氏の自家用車にゴミ箱を満載してやって
来た。ダンボール箱を改造し、内側にゴミ袋を入れたゴミ箱である。
  早川は会場清掃係ではあったが、人手が足りていると午前中のゴミ箱作成には
参加していなかった。ゴミ箱の表には「燃えるゴミ」「プラステック」「ビンや缶」とパソ
コンで印刷した紙を張ってある。
  それら三つセットにして会場の要所要所に並べると、後はしばらく仕事がない。
早川は暇つぶしにとうきびの皮むきを手伝う事にした。

  午後1時、夏祭り開会の花火が上がる。
  会場の入り口では、待機していた子供達の第1弾の数人が東町消防署の大型
屈折消防車の試乗でバケットに乗り込む。
  公園奥の舞台では太極拳の威勢の良い演舞が始まる。商店街と町内会の縁日
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も始まる。浴衣を着た子供を連れた親や爺婆が縁日やバザールや舞台をを楽しそ
うに見て歩く。
 「ありゃ、高木さんがいない」
  気が付くと、いつの間にか高木氏の姿が消えていた。早川もいったん自宅に戻り
シャワーを浴びて着替えして来る事にした。

  盆踊りは午後6時から始まった。会場はスポットライトと提灯の灯りで彩られ、や
ぐらの2階では少年太鼓の音が威勢良く鳴っている。
  スピーカーからはおなじみの玉置副会長の声が流れる。
 「さあ、みなさん、これからは年に一度の盆踊りです。大人もお子さんも今宵は楽し
く踊りましょう。良い子には踊りの最後にすてきなお土産を差し上げますよ」
  玉置副会長の声はカラオケボックスにいる時のように明るく弾んでいた。引き続
き北海盆歌のテープが流れる。太鼓の音が一段と高まる。
  やぐらの下では浴衣を着た子供達が大人の所作を真似ながらぎこちなく踊って
いた。踊りの外側にはそれを見守る爺ちゃんばあちゃん、そしてお土産目当ての少
年達がいっぱい立っていた。
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 (夜になっても熱いせいか想像以上の人出だ)
  早川がそう思いながら、ふっと踊りの途切れた先を見ると、ゴミ箱というゴミ箱から
ゴミが溢れかえっていた。そして先田副部長がゴミ袋を交換している。
 「こりゃあ、いかん」  早川は我に返り、先田氏の後を追う。その他の会場清掃係
も会場を回り始める。抜いたゴミ袋は入り口近くの仮の集積所に集める。
  それからが大変だった。集めたゴミ袋を見ると、「燃えるゴミ」「プラスチック」「ビン
と缶」が混ざっているのである。街路灯の下で改めて分別作業を始める。ゴミを入れ
替えているうちにツユとタレが周りに散らばる。そして軍手もズボンもTシャツもべと
べとになる。気温が高いせいか異臭も漂って来る。
  再分別が終わると、大きなゴミの袋は80個ほどになっていた。それらを公園の公
衆便所の脇の小さな空き地に運び、ブルーシートをかけ、ロープで縛る。

 「しゅるしゅる、ばーん」
  その時、上空から懐かしい音がし、同時に大輪の花火がはじける。一瞬、会場が
昼間のように明るくなる。
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第5話 祭りだ、祭りだ  その5 ★★★★★






















           

         
































































































































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