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イタリアかけある記
  高木の言うとおり、町内会館の狭い駐車場にはすでにたくさんの男性理事が集
合しており、左手の物置からトラックに積み込む機材を運び出していた。
  正面玄関の右隅に高さ5mもある鉄製の黒いやぐらが立っている。それを積み
込むためのクレーン車もすでに待機していた。運転者により、立っていた鉄骨のや
ぐらが横に吊るされ、トラックの荷台に寝かされる。
  次に鉄製のはしごが理事達によりやぐらの脇に差し込まれる。畳大のベニヤ板
や重い電線の束が次々と押し込まれる。作業をしているみんなの額から汗が流れ
出す。
  やぐらを積んだクレーン車が狭い敷地を慎重にUターンして正門から出て行く。
  早川がようやくほっとしていると、
 「さあ、それではみなさん会場のクリーン公園へ行きましょう」
  と誰かが声をかける。
  この一声で、爺さん達はありんこのように連なって会場へ向かう。

  5分間ほど歩いてみんながクリーン公園に到着すると、クレーン車はすでに到着
していた。誰かが声をかけるまでもなく、後から積み込んだベニヤ板や電線の束や
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はしごを下ろし始める。
  ライン敷きで白く印された場所にクレーン車がやぐらを吊るし上げ、立てる。次に
やぐらに鉄製のはしごを結わえつける。1階部分と2階部分にベニヤ板を手渡しで
持ち上げ床を作る。
  今度は提灯のソケットが付いた電線の束を解いて、端を持って2階部分に登って
いく。4本の電線の端を2階の四隅の柱に縛り付けると、下の理事達は4本の電線
を会場の端まで転がして地面に敷いて行く。
  その電線に万国旗と電球と提灯をつける。これが終わるとやぐらの反対側の電線
の端を会場の外側に立つ電柱に縛りつける。やぐらの上の理事が電線を引き上げ、
力づくで引っ張るとやぐらから会場の四方に万国旗と提灯がひるがえる。
  日ごろ閑静な公園がこれだけでいっぺんに夏祭り会場と化す。
 「やあ、いつもながら見事なもんだねぇ」
  昨年から経験済みの高木分会長が空を見て歓声を上げる。
 「本当、爺さん達もなかなかやるもんだねぇ」
  初めて経験する早川も同じ思いである。
  いつの間にか、やぐらの上には「東山町内会夏祭り」の看板も4面に飾られてい
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た。公園の奥では、明日の午後、太極拳やエレキバンドや歌謡ショーに使う舞台
が地元の建設業者によって建設されていた。

  一連の作業を終えてみると、早川は会場係りの存在に気が付かなかった事にな
る。しかし、理事達は毎年の作業で手順を熟知しているのか、黙々と仕事を続けて
いた。早川と高木は彼らの動きを見よう見まねで手伝うしかなかった。
  早川が時計を見ると午前11時に近くなっていた。早川の身体は久しぶりの力仕
事であちこちがきしんでいる。
 (今日はこれで終了かな?) と思っていると、
 「ご苦労さんでした。明日は午前9時に町内会館集合です」
  宮城副会長が挨拶する。
 (そうか、宮城副会長が会場係の責任者だったのか?)
  早川は今になって気が付いた。

  8月9日の日曜日、夏祭りはいよいよ初日を迎える。
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  午前9時10分前にはほとんどの男性理事が町内会館の前に集合していた。今
日の作業は午後1時から開店する縁日の設営である。男性理事達が物置から関
係する機材を取り出している。物置の前には造園業者から借りた小型トラックが横
付けされている。
 「今日も暑いですねぇ・・・・・・」
  高木の顔を見た早川が話しかける。
 「28度ならまだいい方さ、明日と明後日は30℃の予報だよ」
  と高木が早川を驚かす。
 「まいった、まいった」
  汗かきの早川が愚痴をこぼす。
  間口が3間もある大型テントの支柱はいくつかに分けて縛っているが、鋼鉄製で
とてつもなく重い。テントシートの袋も同様である。早川と高木は2人がかりでようや
く荷台に持ち上げる。
  トラックの荷台にはアンパンマン事山田分会長と若い理事が乗っていて、それら
を持ち上げては積んでいる。この他焼きそば用鉄板とガスコンロ、とうきび用大きな
寸胴鍋と大ガスコンロなどを載せるとトラックはたちまち満杯になる。
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第5話 祭りだ、祭りだ  その3 ★★★






















           

         

































































































































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