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  早川はふと思った。

  坂本総務部長が一通り説明を終えると、質問を受け付ける。
  会場からたくさんの手が上がる。
 「昨年の反省会の時、焼きそばの平鍋とガスコンロが2組では製造が追いつかな
いから、もう1組用意するよう要望しましたがどうなりましたか?」
 「暑いテントの中で焼きそばを作るわけですから、人数を多くして交代していかな
いと日射病になると思います」
 「花火の燃え殻が近所に落ちてきて危険だと苦情がありましたが?」
 「商店街の縁日は町内会の縁日同様午後5時までに止めてもらって、テーブルと
椅子を片付けてもらわないと盆踊りに支障を来たします。執行部はきちんと商店街
に申し入れをお願いしたいと思います」
 「盆踊りのやぐらは鉄骨が下の方から錆び付いてきています。危険だと思います
が、いつ直すのですか?」
 「来賓者や踊りの方々に持たせる焼きそばを、お客が並んでいる前で接待係に
手渡すのはいかがなものでしょう?」
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  理事達が昨年の夏祭りで疑問に思った事項が次々と述べられる。
  これらの質問に関係する三役がそれぞれ回答するが、「あー」、「うー」の世界で
何を言っているのかさっぱり分からない。回答があやふやだから、その回答にまた
質問が殺到する。
  理事の中には坂本総務部長の説明を聞いておらず、再び質問する人もいる。
  時計は午後9時近くになっていた。
 「話は十分出つくしたと思います。時間も遅くなって来ましたので、このへんで終わ
りたいと思います。それでは会長、閉会の挨拶を!」
 坂本総務部長に催促され、大林会長が立ち上がる。
 「貴重なご意見をたくさんいただきましてありがとうございます。今年の夏祭りは何
と言っても25回目になります。この節目の夏祭りを何として成功させたいと思いま
す。商店街ともよく話し合っていますので、よろしくお願いいたます」
  会長の閉会挨拶に早川は、(執行部は理事達の意見に何も答えていないので
はないか?) と憤然としていた。

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  実行委員会の帰り道、早川は高木に話しかける。
 「今日のみなさんの質問は昨年の反省会で出たんでしょう?」
 「そうだよ、だけど1年経っても執行部は何一つ解決していないのさ」
 「ひどい話だよねぇ、それなのに理事達はどうしてこんなにやる気になっているん
ですかね?」
 「あんたも実際にやって見ると分かるけど・・・・・・執行部は大勢の人達の前で挨
拶して目立ちたいんじゃない?・・・・・・平理事は暇を持て余しているのさ」
  高木は事も無げに言う。高木は夏祭りだけではなく町内会全般に覚めた見方を
している。
 「そうなんですかねぇ?」
 「やりたい人にやらせときゃいいのさ、手伝いもほどほどにしなきゃ、身体を壊す
よ」
 「分かりました」
  とは答えたものの、新米の早川は言われた事は一通りやらなくてはと思ってい
た。この点では早川も変にくそ真面目なところがある。
 
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  夏祭りの前日の8月8日の金曜日、午前8時半、男性理事達は町内会館に召集
されていた。
  理事達はいずれかの係に配置されているものの、共同でやらなければ出来ない
大きな仕事があった。それは盆踊りのやぐらと縁日用テントの設置と撤収である。
  集合時間に遅れまいと早川が急いで歩いていると、後ろからチャリンコに乗った
高木が声をかける。
 「そんなに急がなくてもいいよ」
 「もう5分前ですよ」
 「暇な爺さん達がもう来ていて仕事をしているよ」
  と言って早川を追い抜いて行く。
  そう言われて見ると、早川にも思い当たる事が多々あった。例えば年に何回か
理事会の会場作り当番に当たる。しかし、開会の30分前に着いても会場は出来上
がっているのである。言わば町内会時間である。
 (真面目に来ているんだから、約束した時間になってから、みんなが集まってから
仕事をすべきではないか?)
  早川はそう思いながら高木のチャリンコの後を追う。

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第5話 祭りだ、祭りだ  その2 ★★






















           

         

































































































































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