「それでは議題に入ります。私から議案に基づき一通り説明し、質問は後ほど一
括して承ります」
こうして坂本総務部長の説明が始まる。
盆踊りの実施日は8月9日(日)、10日(月)の2日間、午後6時からで8時半の
終了時に花火打ち上げ、縁日は東山商店街との共催で9日(日)の正午から6時
までである。
会場は例年通り東野クリーン公園である。役割分担は、大会役員、大会事務局、
全体の進行司会、盆踊りの司会、舞台担当、会場係、消防屈折車試乗担当、縁日・
屋台担当、来賓接待、などなどである。
町内会の理事にはどこかの係に必ず配属されるが、これだけではない。
夏祭りには開催前日からの資材搬入、テント張り、終了翌日の後片付けなど全
員でなければ出来ないたくさんの仕事があり、各自の担当の他にいくつもの仕事
を兼務させられる。
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早川は夏祭りの役割分担表を見て困惑していた。会場清掃係の名前を見ても責
任者の先田理事以外顔をよく覚えていないのである。
白内障のせいで遠くの理事の顔がよく見えなかったせいもあるが、約50人もい
る理事の顔と名前を覚えられるはずもないし、必要な人以外覚えていなかったた
めである。相手の理事も新米の早川の名前と顔を覚えていない。
(困ったなぁ) 早川が内心そう思っていると、
「みなさん、私語はやめてください」
坂本総務部長がマイクを持って大声を上げる。会場に集まった理事達は、昨年
の夏祭りを思い出したのか、今年の役割分担に異議があるのか、横を見たり後ろ
を向いて話をしていた。
坂本総務部長の一喝で理事達は一時静かになったが、今度は小さな声で話し
始める。
理事達はそれでなくても耳が遠い。小さな声が聞き取りにくくなった理事達はさ
らに顔を寄せ合って話し始める。
(昨年の夏祭りが順調にいったわけじゃないのかもしれない)
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