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イタリアかけある記

  山田分会長はみんなの様子を見る。
 「それじゃ、玉置副会長に乾杯の音頭を」
  山田氏の要請に玉置副会長が立ち上がる。
 「みなさん、たいへんご苦労様です。今年度もこのメンバーで元気で頑張りましょ
う、乾杯!」
 「乾杯!」「乾杯!」「乾杯!」
  狭い部屋に乾杯の音頭がこだまする。

 「ところで先田さん、先ほど公園の草刈りの話がありましたが、あれは一体どうい
う事なのですか?」
  アルコールが入り、オードブルの残りが出され、みんなが饒舌になった頃、早川
が右隣に座っている先田氏に訊ねる。先田氏は町内会の先輩ではあるけれども、
年齢的には近いと感じていた。
 「実はね、この町内会には札幌市から管理を委託されている公園が20近くある
のさ。それで、夏の間は最低月に1回は草刈りをする事になっているんだ。われわ

れの東Bブロックには管理委託公園が4っつあってさ・・・・・・理事全員で草刈りをし
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てゴミをボランティア袋に入れてゴミステーションに出すんだ」
 「町内会ではそんな仕事もやっているのですか?当日は何か特別な道具を持っ
て行くのでしょうか?」  早川はなおも訊ねる。
 「ゴルフ場にあるような大きな草刈り機と肩掛けの草刈り機はは山田分会長が持
って来るから、われわれはほうきや熊手、もしくは大きな塵取りを持って行くのさ」
  先田氏が答える。
 「そうですか」
 「分かりました。それにしても朝7時集合は堪えますね?」
  朝寝坊の早川にとってそれが問題だった。
 「夏に向かってだんだん暑くなるし、何よりも8時半までにゴミステーションに出さな
いと・・・・・・ゴミ収集車が行ってしまうからね」

  先田氏が答える。
 「なるほど、朝早いのはそういうわけですか?」
  と早川が言うと、
 「それでこんな飲み食いが出来るわけさ」
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  先田氏がにやりと笑う。
 「えっ、今日の打ち合わせが草刈りと関係あるんですか?」
 早川は思わず声を上げる。
 「管理委託公園には、札幌市から1公園について年間4万円の委託作業料が出て
いるのさ、それがブロックごとに入ってくるから、こういう会合が出来るという訳さ」
 「町内会の経費じゃないのですか?」
 「班長会議には町内会から助成金が出るが、今日みたいな事前打ち合わせには
出ないから、委託作業料を使っている訳さ。毎月の草刈りのご苦労さん会を兼ね
ているんだ」
 「そうなんですか」

  初めて聞く話に早川はただただ驚く。
 「何を難しい話をしているんだ?」

  そこへ山田事務局長が日本酒のビンを持って3人のところへやってくる。本人も
けっこう飲んだらしくアンパンマンのように真っ赤な顔をしている。
 「公園の草刈りの話ですよ」  先田氏が答える。
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 「公園の草刈りか?あー、そう言えば早川さんに話すのを忘れていた」
 「何ですか?」
 「あんたの家の下の方に仲公園があるだろう?」
 「名前は覚えていませんが、ありますね」
 「あそこの管理をしてほしいのさ。大々的には全員で草刈りをするが、1週間に1
度くらい見回りして、危険がないかどうか、ゴミは散らかっていないか?見てほしい
んだ」
 (これも分会長の仕事のうちか?家に近い人が見ているんだな?)
 「分かりました、やります」 早川が答える。
 「それでね、1ヵ月に1度報告書を保険衛生部に提出する事になっているんだ。今
度その用紙を渡すから、頼むね」 
  そう言うと、山田事務局長はよろけながら自分の席へ戻って行った。
  早川が辺りを見回すと、テーブルの上の皿がすっかり空になり、女性軍や酒の弱
い男達がアイスクリームやケーキを食べていた。

  この時、早川が予期せぬ出来事が起こった。
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第3話 星影のワルツ  その3 ★★★






















           

         
































































































































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