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イタリアかけある記
  薄暗い長方形の部屋の右奥にはカラオケのテレビと機械装置がでんと控えてお
り、煌々と光っている。向かいの壁側にはソファーが、廊下側には移動式椅子が並
んでおり、そこに先着の理事達が座っている。
  真ん中には大きなテーブルが4つ置いてあり、かんたんなオードブルとコップが並
んでいた。あたりにオードブルの匂いが充満している。
  早川は新参者とて廊下側の先田氏と高木氏の間の席に座る。
  そこに受付で打ち合わせを終えたばかりの山田分会長が部屋に入ってくる。隣
の人に持ってきたコピーを配るよう指示してから、カラオケのマイクを持つ。
 「えーっ、入っていますか?」
 「入っているよ」
  この中では比較的若そうな先田氏が答える。
 「えーっ、それではみなさんおそろいになりましたようで始めます。えーっ、今年度
の班長会議は5月17日の日曜日、午後5時からここシダックスの大部屋で開催し
ます。えーっ、よろしいでしょうか?」
 (配られた去年の文書のコピーが「新班長懇談会」となっている。会議ではなく飲
み食いカラオケつきなのか?)  早川が唖然としていると、
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 「当日の人数は、われわれ理事を含めて40名くらいでしょう?あの大部屋で入り
ますか?」
  と北村研修部長が山田分会長に質問する。
 「えーっ、何とかなると思います」
 「大丈夫?」
  北村女史がなおも食い下がる。
 「かといって、これだけの人数が入る所は他にないし・・・・・・」
  山田分会長が汗をぬぐいながら答える。
 「町内会館でやるにしても、準備や後始末も大変だから・・・・・・しょうがないか?」
  北村女史は町内会館で実施すると、準備や後始末が女性理事の負担になると
考えたのか、しぶしぶ納得する。
 「えーっ、それではそういう事にして、えーっ、役割分担はご覧の通りです」
  配られたコピーには、開会の挨拶の他、町内会の概要説明、事業計画の説明な
どの分担が書かれていた。
 「えーっ、なお、閉会の挨拶は新分会長の早川さんにお願いします」
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 「えっ、私が挨拶を?」  早川は思わず声を上げる。
 「ハヤちゃん、顔見せ、顔見せ」
  隣の先田副部長が笑って手をたたく。みんなも笑って見ている。どうやら異議申し
立ては出来ないようである。
 (あまり得意ではないけど、まあいいか)
 「分かりました」
  早川がそう答えると、山田分会長が、
 「早川さん、もう一つ、これは昨年の文書を修正したものですから、これを見て今年
の班長宛案内文書を作ってください、お願いしますよ」
  山田分会長が早川の顔を見てにんまり笑う、こんな時だけは山田分会長もどもら
ない。
 「了解しました」
  早川はこれも新参者の務めかと引き受ける。
  これで打ち合わせが終わったかに見えたが、山田分会長がふたたび話し出す。
 「えーっ、もう一件、みなさんに連絡事項です。えーっ、市から管理を委託されてい
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る公園の草刈ですが、今年度の第1回目は5月11日、月曜日の午前7時、仲よし
公園に集合です。えーっ、いいですね」
 「分かりました」
  各自それぞれメモを取る。中には自分の携帯のスケジュール表に書き込んでい
る人もいる。どうやらこれで打ち合わせは終わりらしい。
 
 「山田さん、早く料理を出してもらって」
  北村女史が山田分会長に催促する。
 「分かった」
  山田分会長が受付に室内電話をする。
  しばらくして、ウエイターがワゴン車に生ビールのピッチヤーを4っつ乗せて入っ
てくる。
 「みんな、コップについで・・・・・・ボーイさん、日本酒もオレンジジュースも5本くら
いづつ頼むよ」
  山田分会長は忙しい。
 「みなさん、ビールは入ったかな?」

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第3話 星影のワルツ  その2 ★★






















           

         

































































































































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