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  早川にしてみれば、町内会の総会や理事会だけでなく、その他の会議や打ち合
わせにも疑問を感ずる事が多かった。
  班長会議の打ち合わせもその一つだった。

 「えー、東Bブロックの理事のみなさん、えーっ、こちらにお集まりください」
  4月29日の総会の後、山田勝美東4分会長が東Bブロックの理事達を集め、話
し始める。74歳になる小柄でずんぐりとした体型の山田分会長はくぐもった声でも
そもそと話す。
  町内会加入世帯が3,800世帯と、札幌で一番大きい東町町内会は分会数が
18分会、班の総数は217班を数える。
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  町内会では分会の数が多いため、東A、東B、西、南、北と5つのブロックに分け、
各種の連絡を徹底している。東Bブロックには東4A、東4B、東5、東6の4つの分
会がメンバーであり、その事務局を理事経験が長く年長の山田分会長が担当して
いる。
 「えーっ、今年の班長会議ですが、5月17日日曜日に開催したいと思います」
  山田分会長が理事の顔を眺めながら話を続ける。
  新年度になり班長の大部分が新しくなったので、東Bブロックに所属する各分会
が合同で班長会議をするらしい。
 「班長会議が5月17日の日曜日ね」  誰かが復唱する。
 「つきましては、えー、その打ち合わせを5月2日の土曜日午後6時にいたします。
場所は、えー、シダックスです」
 「シダックスってどこですか?」
  聞いたこともない場所に早川が訊ねる。
 「早川さん、シダックスを知らないの?」
  研修部長の北村京子がけげんな顔をする。北村京子は早川と同じ東4B分会か
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ら出ている女性理事である。年の頃なら早川より数歳年上かと思われる。

 「知りません、シダックスって何ですか?」
 「あらまあ、有名なカラオケ屋さんよ」

 「そうなんですか?」
  カラオケが嫌いな早川が覚えているはずもない。
 「近くの本屋文教堂の隣にあるでしょう?」
 「そう言えばあったような気もします」
  そういいながらも、カタカナの看板の店を連想していた早川にはさっぱり思い浮か
ばない。
 「5月2日の土曜日、午後6時集合よ」
 「わ、分かりました」
 (カラオケ屋で会議?)
  そう思いながらも、早川は忘れないよう手帳に記入する。

 「帰りは?」  早川の妻の景子が訊ねる。
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 「せいぜい2時間ぐらいだろう」
  5月2日の6時10分前、早川はそういって自宅を出る。会場のシダックスへは歩
いて5分の距離である。シダックスはいつも通っている道の左角にあった。

 (これはカラオケ屋だったんだ、どおりでいつも車が駐車していると思った。今日
は土曜日だから特に車が多いな?お酒を飲まない人が運転するのかな?)
  早川がそう思いながら玄関の扉を開けると、2階まで大きな吹き抜けがあるホ
ールがあった。正面には2階へ上る階段があり、その前でライザ・ミネリこと加藤理
事と北村研修部長が待っていた。
 「早川さん、部屋は2階の201号室よ」
 「分かりました」
  早川は階段を上りながら、初めて見るカラオケ屋の内部を不思議そうに見てい
た。右手の奥に受付カウンターがあり、山田分会長が何か打ち合わせをしている。
 「こんばんわ」
  早川は2階の廊下の右手にある201号室の扉を開ける。
  中には、先に来た玉置美恵副会長、坂本省三総務部長、先田秀樹保険衛生部
副部長、高木孝作分会長など東Bブロック出身のおなじみの理事達が座っていた。
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第3話 星影のワルツ  その1 ★






















           

         























































































































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