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 「そう、9月2日のキャンセルの後に入れてもらったのね、ラッキーね」
 「うん、7月8日にまた来なさいって」
 「それで札幌運転免許試験場にはいつ連絡するの?」
 「今日は試験場も終わっているから明日連絡するよ」
  こうしていつもより2時間も遅れて早川の晩酌が始まった。

  翌6月10日、早川は朝から町内会の用事が出来て、試験場に「特別新規申請」
の電話連絡をするのが午前11時40分になった。
  早川は6月5日に中央優良運転者免許更新センターで言われたとおり行動して
いるだけで、この段になっても「特別新規申請」の意味するところが分っていない。
したがって話が要領を得ないのは仕方がなかった。
 「実は、6月5日に中央優良運転者免許更新センターで免許更新をしようとすると、
視力が足りないと言われ、眼科医で検査をしてそちらに電話しなさいと言われまし
た。昨日6月9日に八木眼科で検査をしたところ白内障と診断されました。手術は9
月にする予定です。それでこの後どうしたら良いのでしょうか?」
  早川がおずおずと尋ねる。
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 「はい、名前は?免許交付月日は?免許の種類は?運転免許番号は?有効期限
は?」

  5番窓口の男は明らかに不機嫌そうな態度で、機関銃のように次から次へと質問
を浴びせ掛けてくる。
 (この男は上司に叱られたのか?神さんと喧嘩したのか?それとも昼飯近くでお腹
がすいているのか?分らなくて聞いているんだからもう少し親切に教えてくれても良
さそうなもんだ)
  そう思いながらも教わる側の早川は下手に出て答えるしかなかった。
 「手術はいつ?」
  再びぶっきらぼうに聞いてくる。
 「9月2日と7日です」  早川が答えると、
 「そうしたらですね、手術が終わったら、初診日と手術日の診断書、失効した免許
証・・・・・・ああ、そうそう、免許の切れる7月5日以降は車に乗っちゃ駄目だよ、分か
ってるね」
 「はい」
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 「それからと・・・・・・本籍が記載された住民票、印鑑、写真、これらを持ってこちらの
5番窓口に来て下さい」
 「はい、午前でも午後でも良いのですか?」

 「木曜日の午後が比較的空いています」
  5番窓口の男の話がようやくまともに聞こえた瞬間であった。
 「ありがとうございました」
  早川は不快感を隠しながら電話を切る。

  この日の午後6時30分、町内会の6月の理事会が開かれた。
  早川はお酒を飲みたいのを堪えながら、自宅を出る。歩いて10分ほどで町内会
館に到着する。早川が席に着いた時には開会の5分前だったが、すでにほとんどの
理事がそろっていた。それぞれ周りの理事と何事か話している。
 (みんな暇なのかな?)
  早川は町内会時間に閉口していた。町内会のお年よりは集合時間の15分前に、
もっと早い人はに30分前に集まるのである。
  会議は定刻に始まった。
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  議題は、規約改正委員会、会館運営委員会、班長会議の運営、町内会愛好会、
夏祭り実行委員会、総会時の要望・意見のとりまとめ、各部の報告について、などで

あった。
  ひな壇に座っているのは、4月29日の定期総会で承認された大林会長以下の執
行部である。 しかし、新役員選出に当たっては理事の間で意見の相違があったよう
で、それを引きずっているのか、5月の理事会もぎぐしゃくしていた。
  今月の理事会も意見の相違が浮き彫りになる。
  例えば、町内会愛好会への予算配分をめぐって、
 「各愛好会への配分が公平でない、人数をきちんと把握しているのか?」
  という意見が出る。
  すると提案者である坂本総務部長は、
 「あくまでも愛好会は自発的なものであり、申請を尊重して何が悪いんですか?」
  と、自分の意見を通そうとする。
 (質問に何も答えていない、総務部長の仕事はみんなの意見をまとめる事ではな
いのか?)  早川はうんざりしていた。
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第4話 運転免許一時停止  その5 ★★★★★






















           

         
































































































































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