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イタリアかけある記

  そう思いながら、4月と5月の町内会の仕事を思い出していた。

  4月15日、早川にとって2回目の回覧用紙が配達されてくる。中身は4月29日
に開催される定期総会の案内と出欠連絡票、4月26日の春の一斉清掃のお知ら
せ、子育てサロンの案内、東町小学校と中学校の学校便り、東町交番便り、等々
である。これらを班長宅に配達するとともに、定期総会や春の一斉清掃に参加す
る。
  5月に入ると、広報さっぽろと回覧版の配布、班長会議の実施、町内会費のお知

らせと徴収、定期総会後の町内会報の配布、間岩川の清掃活動、やまべの稚魚放
流、日赤募金活動の説明会への出席、ゴミ処理有料化説明会への参加、と誠に忙

しい日々が続いた。
 (本当に人使いの粗い町内会だ)
  そう思った瞬間看護士から早川に声が掛かる。

 「早川さん、こちらで検査します」
  看護士の後を追うと、待合室から診察室の間に広い検査室があり、右手にたくさ
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んの器械が並んでいた。左手に検査の順番を待つベンチが2つある。ここも検査を
待つ患者がいっぱいで、お尻とお尻がぶつかり合っている。

  「まずはこちらの器械から、最初は右目から始めます」
  こうしていよいよ検査が始まった。何を調べているのか、丸い穴を覗き込むと中で
風景がぼけたりはっきり見えたり、また別な器械では目に風があたったり、
瞳孔を開
かせて検査する時もあった。
  目じりに紙縒りを挟まれ、目の渇きを検査する時もあった。しかし、検査は連続で
はない、その都度待たされるのであった。
 (これで終わりか?)
  と思うと、
しばらくして暗い個室へ導かれ目に光線を当てられ目の中を覗き込まれ
る。また、しばらく待たされその後に視力検査もされた。
  (いつになったら診察室へ呼ばれるのか?疲れるなぁ)
  早川がそう思った時には午後5時になっていた。

 「早川さん」  左手のベンチの向こうにある診察室から年配の男の声する。
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 「はい」
  中の光が漏れないように入口に垂れ下がっているビロードの幕を開けて入ると、
うす暗い診察室の真んに机があり、天井から淡い光が当たっており、その向こうに
八木先生と思しき人が座っていた。
 (ここに大きな水晶玉が飾ってあればまるで占い師の部屋のようなだ)
  早川は一瞬そう思った。しかし、八木先生は占い師とはほど遠い真面目な顔をし
ていた。細い顔に
眼鏡をかけ、山羊のように優しそうな顔をしている。年の頃なら
早川とあまり変わらないように見える。
 (八木眼科ではなく山羊眼科にしたら良いのに・・・・・・)
  そう思っていると、 
 「早川さん、どうしました?」
  数々の検査結果を眺めながら先生が尋ねる。
 急に現実にもどされた早川は、

 「実は・・・・・・」
  と運転免許更新の顛末を話した。
 「そうですか、ちょっと診て見ましょう、ここにあごを乗せ、額をつけてください。まず
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は右目からですよ」

  言われるままに早川が検査台に額をつけると、先生はペンライトみたいな道具で

様々な角度から早川の眼球に光を当て覗き込む。
 「うん、右も左も白内障が大分進んでいますね」
 「白内障?」  思いもせぬ診断に大声を出す。
 「パソコンとデジカメのせいで視力が落ちているのではないのですか?」
  早川が尋ねる。
 「違います、水晶体が白く濁って少ししか光が網膜に達していないのです。それで
良く見えないのです」
  先生は早川の無知を諭すことなく、あくまでも科学的に淡々と説明する。
 「それで?どうすれば?」
 「手術をした方が良いですね」
 「手術ですか?その後、牛乳瓶の底みたいな分厚い眼鏡をかけるんですね?」
  早川は30年前に自分の会社の役員が白内障を手術した後の顔を思い出してい
た。
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第4話 運転免許一時停止  その3 ★★★






















           

         
































































































































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