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イタリアかけある記

  早川が尋ねる。
 「検査の結果、事情によってはまた受験できますから・・・・・・とにかく眼科医へ行っ
て、結果が出たらこちらへ電話してください」
  とA5判の「特別新規申請ご案内」を早川に渡す。これには窓口となる札幌運転
免許試験場の場所と電話番号、必要書類、受付時間が記載されている。
 「は、はい」
  動揺している早川にはこれを見ても何の事だかさっぱり分らない。
  運転免許更新講習で配布された「交通の教則」には、病気療養や海外旅行など、
所定の止むを得ない理由で更新期間内に手続きが出来ない時は、更新期間前に更
新手続きをする事ができると明記している。
  早川も運転免許講習で何度か聞いていたはずなのだが、そんな事態を考えても
みないため、記憶に残っていないのである。
 (とにかく眼科医へ行って調べてからの話か)
  早川はすごすごと中央優良運転者免許更新センターを後にした。

 「どうだった?」
  妻の景子が帰ってきた早川に声をかける。
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 「駄目だった、眼科医に行って診てもらえとさ。そしてここへ連絡しなさいと・・・・・・」
  早川は女の視力検査官からもらった紙切れを元気なく見せる。
 「そう」  景子は早川の返事を聞かなくとも結果は分っていた。
  最近の早川はすごく
視力が落ちていて、テレビの韓国ドラマの日本語も良く見えな
いと大きな地デジテレビの間近かに座って見ていた。
まして遠出の運転や雨の日や
夜の運転は「目がかすむ」と称して避けていた。当然の結果といえば当然の結果で
あった。
  景子は(このままでは今後何処へ行くにも自分が運転しなければならなくなる)と
心配する。
 「それじゃあ、お父さん、早速眼科へ行かなきゃ。パチンコ甲子園の下の八木眼科
の先生は名医だって」
  景子は近所のおばさん達から評判を聞いていた。
 「そこにするか?来週の
6月8日は月曜日だから混むね。9日の火曜日に行って

来よう」
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  早川はしぶしぶ決心する。

  6月9日に意を決して八木眼科へ行って見ると、午前中は手術とかで、診療は午
後2時からとなっている。早川は出鼻をくじかれたが、気を取り直して正午過ぎに出
直す。

  角地に立つ病院のドアを開けると、15畳ほどの待合室にはすでに10人以上の
患者がいた。見回すとどの顔もゆうに70歳は超えている。ほとんど婆さんばかりで
爺さんは早川ぐらいであった。
 (爺ちゃんは気が小さくて歯医者もよう行かんからな) 早川はそう思った。
  受付カウンターは昼休みでシャツターが下りておりていた。その前
の新患の受
付箱に国民健康保険証を入れて座ろうとするも、4本ある長椅子はすでに満席で
ある。仕方なく立ったまま待つことにした。これでは持って来た文庫本を見る事も出
来ない。
  見ていると次から次へと年寄りの患者がやってくる、小さい子供連れは一組であ
る。 待合室にほぼ隙間がなくなった午後1時50分、ようやく受付カウンターのシャッ
ターが開き、同時に検査室と診察室に通ずるドアが開く。
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  受付では30歳前くらいの小柄な女の事務員が再来受付箱から診察券を取り出
し、再来
の患者のカルテを棚から引き出してくる。そして次々と患者の名前を呼ぶ。
そして返事をした患者には診察券を返し、カルテに番号札を挿んでいく。早川が見
ていると再来患者の番号札はすでに10数人を超えていた。
 「早川さん」
 「はい」 

 「初めてですね?こちらの問診票に必要事項を記入してください」
  と事務員が下敷きと鉛筆つき問診票をくれる。
  早川は狭い待合室で立ったまま何とか問診票を書き込む。この間女性看護士に
よって再来患者が検査室に呼び込まれていく。
  早川が問診票を提出すると、
 「それでは呼ばれるまでしばらくお待ちください」
  と、国民健康保険証を返してくれる。事務員はきれいな顔をしているが忙しくて愛
想もこそもない。早川はあい変らず立ったままである。周りは早川より年上ばかりな
ので座るわけにもいかない。
 (やれやれ、たいへんな病院へ来てしまった)
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第4話 運転免許一時停止  その2 ★★






















           

         
































































































































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