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 「みなんご苦労様です。本日はご承知の通り来る4月29日に開催される平成21
年度定期総会に上程する議案を審議していただきます。えーっ、この1年間を省み
ますと・・・・・・」
  会場がざわめいていてその後の話が聞き取れない。
 (この会長の他に役員が大幅に変わるのでみんな興奮しているのか?)
  早川が勝手に想像する。
 「それではまず第1号議案、平成20年度事業報告について私、総務部長より説
明します」
  早川が手元に配られた議案を見ると毎月の事業報告と各部ごとの事業報告で
ある。総務部長は文面どおり一字一句たどたどしく読み上げていく。
  周囲を見回すと中にはすでにお酒を一杯引っ掛けてきたと見える赤ら顔の爺さ
んもいてこっくり船を漕いでいる。議案の文字を追っている者もいれば、あらぬ方
向を見ている者もいる。

  たった2ページの第1号議案を20分間もかけて説明が終わり、質問を受けるが
長い説明にみんなうんざりして誰一人手を上げない。
 「それでは承認いただいたものと見なします」
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 (説明は長いが質問がなけりゃ結果オーライか?)
  早川が喜ぶ。引き続き第2号議案、平成20年度収支決算報告の説明が経理部
長から始まる。
  初めて理事会に出席した早川は経理部長の名前も分らない。彼は善良で実直そ
うなやさしい顔をしていて決算報告を要領よく分りやすく説明していく。
 「第2号議案の説明が終わりました。ご質問はございませんでしょうか?」
  総務部長の言葉に手を上げて話をし出す人がいる。何を言ってるのか分らない。
 「待って、待って」
  総務部長がマイクを持っていくよう部員に指示する。
 「北3分会の黒田ですが、この会館がある土地は市役所の借地ですね?」
  と話し出す。
 「その通りです」  経理部長が答える。

 「年間の借地料は?」
 「29万3,000円です」
 (この人は説明を聞いていなかったのか?耳が遠くて聞こえていなかったのか?)
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  早川が疑問に思う。
 「それなのに土地購入積立金特別会計には500万何がしの基金が積んでありま
す、いったいこれはどういう事ですか?」
  優しい経理部長は
 (これも先ほど説明した) とは決して言わない。
 「市役所から7,000万円で買ってくれと言われている訳ですが、そんな大金は
町内会はないし一度には払えませんから、こうして毎年少しずつ積み立てていこう
としています」
 「そういう事です。黒田さん、分りましたか?」
  総務部長が確認する。
 「そういう事なら分りました」
  黒田さんが引き下がる。

 「他に質問はございませんでしょうか?」
  総務部長が再び確認する。
 「はい、西2分会の白波です。先ほど聞き漏らしたかもしれませんが、福祉会館
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決算書に予備費とありますが、これは何のためにある科目ですか?」
 「経理部長、答えてください」
 「はい、暖房機、掃除機などの修理代です」
 「それを予備費で充てるのはおかしいのじゃないですか?修繕費を設ければよい
話でしょう?」
 「そうですね、来年からそうします」
 「白波さん、分りましたか?」
 「はい」
  このような例が延々と続く。説明を良く聞いていないで質問する人ばかりである。
 (やれやれ、これじゃあ小学校のクラス会よりまだ悪い)
  早川は正面の大きな時計を見る。時計の針は午後8時を回っていた。
 (この調子では終わるのは9時近くになる)
  想定外の出来事だらけの理事会に早川はうんざりしていた。



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第2話 想定外の出来事  その6 ★★★★★★






















           

         

































































































































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