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小説「眠れない猫」

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イタリアかけある記

 「会社では新人を1日も早く育てて一人前にしようと努力しています。町内会の役
員が減っていると言うのに、こんなやり方では人材が育ちませんよ」
  早川が嘆く。
 「今度、理事会に出席したら分りますが・・・・・・」
  加藤さんのこの言葉に、
 「あっ忘れていました、これは4月8日の理事会の案内状です」
  と早川は文書を渡す。
 「理事会に出ると分りますが、役員は後期高齢者ばかりで、60歳代は数えるほど
しかおりません。みんな耳が遠くしかも頑固者ばかりですからなかなか話がまとまり
ません、疲れますよ」
 「そうですか?・・・・・・それじゃあ出かけましょうか?最初は田中班長さんから訪
問します」  早川はそう言って車を出す。
 
 「あら、いないわねぇ」
  加藤さんが田中班長宅のドアホーンを押しても返事がない。
033


 「こういう時は置いていくしかありません」
  加藤さんが後ろに控えている早川の顔を見る。
 「不在の場合もあると思って私の住所と地図、電話番号をいれた挨拶状も作って
きました」
  早川がA5判の紙切れを差し出す。
 「なるほど、これはいいわね。これと回覧板は郵便受けに入れ、広報はドアの前に
置いておきましょう」 と加藤さんが教える。
  留守の班長が多く、2人の挨拶回りは順調に進む。
  最後の班長は元農家の地主と思われ、畑つきの大きな家に住んでいる。表札は斉
藤と高橋の2枚かかっている。
 「斉藤さん、おられる?加藤です」
  加藤さんの呼びかけにアコムのドアの鍵を開ける音がして小柄で痩せ型の白髪
交じりの老人が顔を出す。多少前かがみである。
 「今度の分会長の早川さんです、よろしくね」
  加藤さんが早川を紹介する。
034


 「新しい分会長さんか?俺、班長を辞めたくてね。前から加藤さんに言ってあるん
だが・・・・・」
  斉藤爺さんが早川の顔をにやりと見る。
 「そんな?」
  早川が困った表情を見せる。
 「俺はもう80歳でな、こんな仕事は出来ないんだ」
  斉藤老人が辞める理由を述べる。
 「お若くてそんな年には見えませんが・・・・・・」
  ここで辞められたら一大事と早川が慣れないお上手を言う。
 「もうボケているんだぜ、早く辞めさせてくれよ」
 「それは・・・・・・」
  早川は困りきって加藤さんの顔を見る。
 「何言ってんの、2つもアパートを持っていて、家賃を集めているでしょう?お爺さん
がやらなきゃ誰がするんですか?」
 「俺は忙しいんだ」
 「お爺さんが忙しい時は娘さんがやってくれると言っていたわよ」
035


  加藤さんも負けていない。
 (親子で二世帯住宅か?それで大きい家に住んでいるんだ)
  初めて合点が行く。
 「町内会長に言っといてくれよ」
  斉藤老人はなおも食い下がる。
 「代わりの班長を見つけたらね」
  加藤さんはこんな場面に何度も遭遇していると見えひるまない。
 「班長のなり手がいないから頼んでいるんだよ」
 「何を言ってるの、早川分会長をよろしく頼んだわよ」
  加藤さんは早川が持っていた回覧板と広報を斉藤老人に渡し、さっさと車に戻
る。
 「いつもこれなんだから、本当に困った爺さんよ」
  加藤さんは怒っている。
 「代わりはいないんですか?」
  早川が訊ねる。
 「店子に代わりを頼んでいるのかどうか分らないわよ・・・・・・?そもそもあの班は
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第2話 想定外の出来事  その3 ★★★






















           

         

































































































































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