きれいな花の写真

★とどのつまりⅡ

■復刻版
忘れえぬ猫たち


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  とどのつまり Ⅱ 作:笹渕忠和本文へジャンプ


第6話 書く事のない手帳
    

 


  昨年12月29日、近所(西野4条9丁目)
のパン屋「プーランジェリー・ミュール」に出
かけ、予約していた食パンを受け取る。

  「来年は何日にしますか?」と問われ、
「1月5日」と答え、肩掛けカバンを開けて、
手帳を取り出すが、それは昨年の手帳だっ
た。新年の手帳に買い替えていなかったの
である。
  
  年が明け、1週間も経ったが、これだけ
の用事で、街中に出かけるのも億劫で、近
所の文房具屋に出かける。まだ、手帳を買
い替えていない人も大勢いると見えて、店
内にはまだたくさん陳列している。
  気に入ったサイズ・色・厚さ・装丁の物
がなく、手に取って何度も確かめる。

  「こちらはいかがですか?」と近くで整頓
していた若い女店員が助けを差し伸べる。
  「ポケットがないと、病院の予約票など
が入れられなくて・・・」と答える。
  「そうですね、手帳にポケットがないと不
便ですね」と愛想が良い。
  「こちらはいかがです?」とまたとても別
の分厚い手帳手帳を見せてくれる。
  「年を取ると、そんなに書く事はないの
ですよ・・・」と真面目に答える。
  「そうですよね」とも答えられず、女店員
が笑う。

  これは本当の話である。手帳にわざわ
ざ書くような用事はほとんどないのである。
たいていの事は壁の大きなカレンダーに
書き込めば用が足りるのである。
  改めて昨年の手帳を見るも、悲しい事
に各ページのほとんどが何も記入されてい
ない。          (2018/01/07)
    


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