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私のCD放浪記

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      【番外編】





●小説
 「猫踏んじゃったU」


なつかしの街角

忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記

(日)に、定山渓ホテルに一泊して開催するというもの。費用は1人9,500万円だ
が、参加費は1人3,000円である。宴会前の会議では、毎年テーマを決めて議
論してきたようだが、後日その報告を聞いても、議論百出で結論が出ず、町内会
としての対策も何もない。そんな経過を見聞きしていたので、早川はこれまで2回
とも参加していない。
  「早川さんは理事研修に参加しないのですか?」
  右隣の高木分会長が尋ねる。
  「うん、カラオケは嫌いだし、大部屋に雑魚寝では眠られなくて・・・」
  早川は本音を言うわけにはいかず、別な理由を言う。
  「そうですか・・・」
  高木分会長は早川のカラオケ嫌いを知っている。
  早川にすれば、高木分会長に本音と違う理由を言ったものの、こちらも出席しな
い理由の1つだった。
  温泉ホテルの相部屋には、早川にとって苦い思い出があった。評判の高い登
別の第一滝本新館が出来て間もなくの事だった。
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  「みなさん、新館で泊まり一献やりましょう。新館は素晴らしいですよ」と取引先
の会社の社長から誘われて、上司・部下ともども泊まりに行ったが、部屋に入って
びっくり、8畳間に4人泊まりの相部屋だったのである。浴場も料理は申し分なか
ったが、宴会が終わると布団がびっしり敷かれ、足の踏み
場もない。そして夜に
なると、取引先の社長・自分の会社の上司・部下が代わる代わる大きないびきを
かき始めたのである。まるでいびき合戦であった。1人のいびきが止むと待ってい
たかのように今度は別な人がいびきをかき始め、早川は朝まで一睡も出来なかっ
た。仕事の時はそれも仕方がないが、退職してからま
でそんな付き合いはしたく
なかった。

  そんな事を思い出していると、坂本総務部長が3つ目の議案「理事の増員に
ついて」説明し始めた。
  「みなさん、ご承知のように、当町内会の理事の数は元々80名から85名ほど
おりました。今年度は現在54名となっており、なおかつ平均年齢も年々上がって
おります。このままでは町内会活動に重大な支障を来たしますので、皆さんのお
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知り合いをぜひとも町内会理事に勧誘していただきますようにお願いします」
  この時ばかりは坂本総務部長の説明も懇切丁寧である。
  「事情は分かりますが、何故辞めていったのか、事情をきちんと把握して、その
対策をしないと同じ事の繰り返しになると思います」
  黒田北3分会長が執行部に対して鋭い指摘をする。黒田分会長は当初勝手が

分からず、まったく頓珍漢な質問をしていたが、3年も経ってこの頃は町内会の実
態を少しずつ分かってきたようである。
  「その辺は執行部も十分承知しており、それなりの対策を講じていきますので、

まずは皆さんからどんどん勧誘していただきたいと思います。まずは勧誘する事
が先決でないでしょうか?」
  坂本総務部長の、あたかも「原因究明と対策は後からでも良いのではないか、
まずは勧誘だ、下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」というような無責任な答弁に、理
事達は「いつもの言い草だ」とそれ以上質問はしない。
  それを良い事に坂本総務部長は、
  「そういう事ですので、よろしくお願いします」と締めくくった。
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  (理事になり手がいないのは、ひな壇の皆さん達の言動にあるのでは?)
  と早川は思うが、彼にもどうしたら良いのか妙案は浮かばない。この後は各部
の報告があり、いつものように実りのない会議は終わった。

  早川がそんな毎日を送っていると、いつの間にか暦は11月の半ばに差し掛か
っていた。

  「早川先輩、ご無沙汰しています、お元気ですか?」
  電話の相手は、親会社時代の後輩、晴山食品課長だった。早川が再就職先を
退職する時に送別会を開いてくれた高橋建築資材部長、大木福利厚生副課長、
晴山食品課長とは年に1、2回集まって旧交を温めていた。
  「相変わらず、何とか生きているよ、どうした?」  早川が訊ねる。
  「早川先輩は再就職先を退職してから、親会社にも子会社にも顔を出さないか
ら・・・高橋建築資材部長が『早川先輩は元気か?』と心配してさ・・・だからまたみ
んなで会いましょうや・・・」
  と晴山君が答える。

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第5話 思い出してごらん  その2 ★★






















           

         


























































































































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