きれいな花の写真

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴 

おじさんの料理日記 

私のCD放浪記

私のCD放浪記
      【番外編】





●小説
 「猫踏んじゃったU」


なつかしの街角

忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記

    
  北国の春は遠い。早川四郎は歩道に残る雪に気をつけながら、町内会館に向
かっていた。
  平成23(2011)年3月30日午後6時少し前、さっぽろ市
東山町内会の臨時理
事会がまさに始まろうとしていた。今日の議題は、来る4月24日に開催される定
期総会用議案の審議である。
  「高木分会長、新年度も分会長を続けるの?」
  早川が隣の席の高木分会長声をかける。

  「わが分会のように厄介な分会の分会長には誰もなり手がいなくてさ、ところで
早川さんはどうするの?」  と高木先輩は逆に問いかけてくる。
001


  高木分会長は早川より1年前に東5の分会長になったが、ここの会員は班長

が訪問しても町内会費や排雪費や共同募金を払わない会員が多いという。その

ため高木分会長は自ら会費を徴収しに歩かなければならず、常々「会費を集める
のは疲れてさ、早く町内会役員を辞めたいよ」と言っていた。
 「私の場合は個人的に今の執行部のやり方には合点が行かなくて、辞めたいの
に代わりがいなくて・・・このままでは2人とも留年といったところですね」
  と早川が苦笑いする。
  「そうだよ」 と 高木分会長も大きなため息をつく。

  早川も町内会を辞めようと、後任を探したが、町内会の良くない噂は巷に流れ
ていると見え、骨のありそうな何人かに折衝するも受け手がいなく、仕方なく今年
も分会長を続けざるを得なかった。規約には書いていないが、他の役員とは違っ
て分会長は代わりを見つけなければ辞められないという悪しき慣習があった。

  今年度、平成23(2011)年度は、さっぽろ市東山町内会の2年に1度の役員改
選の年である。そのため、昨年からいろいろな事があった。
002


  早川はこれらの出来事をあらためて振り返っていた。

  昨年暮の理事会では、各ブロックからその利益代表ともいえる役員選考委員が
推薦され、承認されるとともに、選考委員の互選で選出された館山研修部副部長
が役員選考委員長に就任する事も承認された。
  年が明けて、2月9日の理事会では、館山役員選考委員長により新しい役員選
考方法が提案された。これはこれまで役員選考委員会という密室の中で行われて
いた新三役の選出を、町内会役員全員の投票で選出しようというものだった。これ
は誠に画期的な民主的な方法で、賛成多数で可決された。また、体制強化のため、
副会長を3人体制にする事となった。引き続き、役員候補者
の予備選挙が行われ、
上位得票者を決定し、次回3月9日のの理事会で決選投票を行う事となった。

  しかし、この役員選挙の際には、どさくさにまぎれこんな事実もあった。それから
数日後、この2年間一度も電話をくれたことのない大林会長から、早川の自宅に
電話が入ったのである。
  「早川さん、君、4月から体育部長をやらないかね?」
  と大林会長が電話の向こ
うから猫なで声で話す。
003


  (体育部長?これまでやっていた浜松体育部長はどうなるの?別なポストに移
るのかな?)
  早川の脳内スクリーンに、赤い電灯を点滅させた救急車が写り、「危険です、危
険です」と警告を流している。
 (受けちゃいけないというサインだな?体育部長なら断る理由が山ほどある)
  早川は大きく息を飲み込んで、
  「せっかくのお申し出ですが、会長、実は私、子供の頃から運動音痴でして、他
の科目はオール5でしたが、体育だけはいつも最低でした。ですから体育部長に
は絶対向きません。町内会にはもっとふさわしい方がたくさんおられると思います
ので、そちらに当たってください。ご希望に添えず申し訳ありません」
  と丁重にお断りする。
  「そうか、それなら仕方がないか?・・・」

  大林会長は予想がはずれ、声のトーンが急に下がる。かといって、大林会長は
早川に代わりのポストをあてがうわけではない。電話はこれで終わったが、早川は
納得がいかない。

  (そもそも、町内会の部長ポストは新三役が決まってから、協議して決めるもの
004


 

タイトルイメージ   タイトルイメージ 本文へジャンプ



第1話 ああ上野駅  その1 ★






















           

         
























































































































次のページへ


トップページへ戻る